車名博士に聞いてみた!車名の由来
車名に興味を持ったきっかけは?
大学、高校時代くらいから車名に興味がありました。授業で「地名の由来」を学んだんです。
例えば「ザルツブルグ=塩の砦とりで」であったり、それがとてもおもしろくて。
それを車名に置き換えてみたらどうだろう?と興味を持ったのが、車名の由来を気にし始めた経緯です。
よく自動車ガイドブックの欄外に車名の由来があったのでそれを好んで読んでいました。クルマも大好きだったので、
大学を卒業し、商用車メーカーに就職。自動車誌編集部をいくつか渡り歩き今に至ります。
どうやって調べるのですか?
大学生のころから、メーカーに電話して車名の由来を聞いていました。
けれど、なかなか個人の人に詳しく教えてくれないんですよね。編集者になってから、違う答えをもらえたり、
詳しく教えてもらえるようになりました。たまに本当に、語呂がいいからとか、カッコいいから、なんて適当な理由の車名もありましたけど(笑)。
今回は海外仕様と日本仕様の車名の違いが焦点ですが、例えばフルモデルチェンジしたフィットは海外ではジャズと名前を変えています。
フィットですか……。大物から来ましたね。うーん、なかなか言いづらいのですが、思い切って説明します。
まず、フィットの系譜をたどると、ロゴ、シティと遡さかのぼりますよね。
そのご先祖様であるシティに「フィット」という特別仕様車が存在しました。そのような歴史があり、
けれど「フィット」と名前がかぶるのもまずいということで「フィッタ」という造語を作りロゴの後継車の車名にしようと考えたんですね。
「フィッタ」は社内でかなり進み、それで発売直前まで進んだみたいです。
ただ、いざ発売となる直前にスウェーデン語で大変な意味だとわかったんです。
どういう意味だったんですか?
……いやらしすぎて到底言えません。セクハラになっちゃいます(ということなので、気になる人は調べてみてください!)。
とにかくそれで社内は大騒ぎになったんです。事前にわかって本当によかった。
結局、時代に「フィト」するという意味で、シティフィットとかぶってでもいいから、「フィット」になったんですね。
車名にも歴史があるんですね! もう1台話題のクルマを。ヤリスはなぜ今まで海外と日本で名前が違っていたのですか?
ヴィッツですか。ヴィッツは英語の「Vivid(鮮やかな)」とドイツ語の「Witz(機知)」をかけ合わせた造語です。
しかし、私の調べでは「ヴィッツ」が英語では俗な表現に聞こえる可能性があったので、ヴィッツは日本だけになりました。
逆に「ヤリス」は日本での響きが悪いということで、長年グローバルネームと日本名が違ったんですね。
しかし、今回すべてを一新。来年の12 月にWRCの日本開催があるなど、環境変化のなかでヤリスとしてゼロからスタートする。
そんな意味も込めて、グローバルネームのヤリスに統一したそうです。
なるほど。ほかにも、海外ではちょっと……といった名前があれば教えて頂けますか?
うーん、言いづらいですが、パジェロは海外では「モンテロ」もしくは「ショーグン」なんて名前だったりします。
三菱は第20回東京モーターショーのとき、コンセプトカーで「ジープパジェロ」という名前のクルマを出しました。
しかしそのとき、パジェロがスペイン語ではとんでもない意味だと判明したんです。
かつてダーツでお客さんが連呼してたと思いますが、この名前もやっぱり……?
やっぱり女性の前では言えません! この手の話題はもういいですか?(汗)
もう少しおとなしい話を。じつは日本では「もこもこ」といったかわいらしいイメージを連想する日産のモコですが、
スペイン語圏内では「鼻くそ」という意味だったりします。海外では販売しなかったので名前はそのままになりましたが、
スペイン語は世界で2番目に使う人が多い言語。日本ではなじみが浅いかもしれませんが、気をつけなければいけないですよね。
ちなみに、発売された当初モコの訴求色はグリーンでした。ボクの中ではもう、モコのイメージはあおっぱな……。
うーん、なんとなく車名が数字になっていくのも理に適っているような気がしてきました。逆に全ての国で美しい意味の名前となっているクルマはあるんですか?
「リーフ」ですね。このリーフにもエピソードがあって、リーフは英語で「葉っぱ」という意味ですよね。
葉は光合成によって二酸化炭素を吸収する植物なので、電気自動車のイメージにピッタリです。それで名前がリーフに決まりました。
しかし、葉っぱのモチーフはどこにも見当たりませんよね?
じつは、葉のデザインはフォードが商標を持っていて、使えませんでした。
なので、クリーンで緑の多いイメージの車名ですが、セールスプロモーションにおいて葉のイメージは使えなかったのです。
ちなみに、単純な名前であればあるほど商標の獲得が困難なのは想像にたやすいですよね?
ですが、日産が「リーフ」の名前にこだわったのは、前社長の意向が強く、肝いりの名前だそうです。
なるほど〜。最後に、今世間を騒がせているコロナウイルスですが、クルマファンのなかでは名車「コロナ」のイメージが強いですよね。
そうですよね、トヨタ・コロナ、ずいぶん嫌なイメージができてしまって……。コロナは太陽の表面にある光を表していて、冠つまりクラウンの語源となった言葉です。車名の意味としては、クラウンやカローラといった冠シリーズの元祖といったイメージでしょうか。もうコロナと聞いてクルマを思い出す人も少なくなったかもしれませんが……。
コロナウイルスが最小限の被害で収束したら、また再注目される日がくるかもしれませんね。ありがとうございました!
名前にも歴史あり!!
スズキのハスラーや、ダイハツのロッキーなど、じつは名前にご先祖様がいる車種もあるって知ってた?
ダイハツ ロッキー
1990年に発売された、コンパクトサイズのクロカン車「ロッキー」と、昨年発売されたコンパクトクロスオーバーSUVの「ロッキー」。
初代はロッキー山脈の爽やかなイメージ、現行はゴツゴツとした岩場をイメージしてロッキーと名乗った。
正式には後継車ではないが、同メーカーで同車名、懐かしく思う人も少なくないのでは?
三菱 エクリプス クロス
北米で1989年に、日本で1990年に発売された3ドアクーペの三菱 エクリプス。
日本での販売は2004年のエクリプス・スパイダーが最後となったが、北米では4代目が2014年まで発売されるなど息の長いクルマだった。
エクリプスの意味は「日食・月食の食」。17年発売のエクリプス・クロスはそんな先輩から取った名称だ。